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黎明新報一覧 タイトル画像

 
 

黎明新報 第0号

 
1面記事 〜黎明新報 発刊の辞〜
このほど、小生ことテイラーは王子殿下のご厚意により、当地○○城にて新聞「黎明新報」を刊行させていただく運びとなりました。
発刊を前に読者諸賢にひとつご理解いただきたいことがあります。
「黎明新報」は王子殿下のお立場を明確に支持いたしますが、○○軍の広報紙ではないということです。
本紙はあくまで「報道」の姿勢を貫き、読者諸賢にお伝えすべき事実の追求に努めることをお約束いたします。
「黎明新報」にどうぞご期待下さい。
 
 
 

黎明新報 第1号

 
1面記事 〜女王騎士、レルカーを焦土に〜
先日のレルカー攻防戦において、ゴドウィン側は自軍の撤退を速やかに行うためレルカー市街に放火していたことが明らかとなった。
目撃者の証言によると、ゴドウィンの部隊はレルカー西の中州の各所に油をまいて点火した後、○○軍の包囲が緩むのを待って撤退。さらに、住民が残っているにもかかわらず、西側の橋を破壊したという。
王子殿下の軍およびレルカー西の中州の世話役オロク氏らの救助活動により死傷者は最小限に抑えられたが、ゴドウィン側の蛮行に民衆の間で強い非難の声が上がっている。
また、ゴドウィン側の総指揮官がファレナの守護者たるべき女王騎士であったことも、人々の憤りを誘っているようだ。
 
2面記事 〜レルカー3氏、王子殿下に協力を約束〜
レルカーの3つの中州をそれぞれ代表するヴォリガ、ワシール、オロクの3氏は、このほど王子殿下の軍への全面的な協力態勢に入ることを表明した。
従来からレルカーは中州ごとに政治的な立場が異なることで知られており、特に戦乱が起きてからはこの立場の違いを原因とする対立や抗争が激化していた。
そのレルカーが住民の総意として王子殿下への支持を表明したのは、レルカー攻防戦で女王騎士ザハークが行った放火作戦に対する反感が反ゴドウィンの世論に発展し、爆発的に広まったためと見られる。
 
連載 〜第1回 本企画の主旨〜
この連載企画では、○○軍に敵対する勢力内の重要人物に焦点を当て、記者が知り得た事実を公開して行きたい。
読者諸賢の中には彼等に家族や友人を奪われたり傷つけられたりした人も少なくないであろうし、そうであれば「あんな奴等のことなど知りたくもない」と考える向きもあろうかと思う。
しかし、敵を知ることは勝利を得る上で重要である。怒りを忘れないことと、知るべき事実から目をそむけることは別なのだ。
記者は本連載が○○軍の勝利に貢献できると確信している。
次号、第2回では、レルカー攻防戦において市街に火を放つという驚くべき暴挙に出た女王騎士ザハークを取り上げたい。
 
 
 

黎明新報 第2号

 
1面記事 〜王子殿下に山賊疑惑?〜
先ごろより、セーブル近辺において王子殿下が山賊行為を行っているとの噂が飛び交っており、○○軍首脳を困惑させている。
周知のとおり、該当する時期に殿下はレルカーでの作戦行動に従事していた。この疑惑が全くの事実無根であることは明白である。
しかし現地では「確かに殿下だった」との目撃証言まであると伝えられ、否定の声明を出すだけでは理解が得られない情勢だという。
○○軍首脳陣は、何者かが殿下になりすまして犯行を行っていると見て、真相究明に当たる方針を明らかにした。
 
2面記事 〜ヤシュナ村の温泉、危機に〜
温泉で有名な観光地ヤシュナ村で、地下の源泉から引き込んでいる湯の量が急激に減少するという珍事が発生。温泉旅館の経営者たちを困惑させている。
原因は、地下から湯が上がって来る通り道をドワーフが誤って掘り抜いてしまったため。彼等はヤシュナ村の関係者に深く陳謝すると共に、再び湯が出るよう修復すると約束しているが、かなりの時間がかかる見通し。
それまで旅館の経営をどうするか、ヤシュナ村にとって頭の痛い日々が続きそうだ。
 
連載 〜ザハーク〜
前回の予告どおり、女王騎士ザハークについて知り得た情報を公開する。
出身はゴドウィン家の遠縁に当たる貴族。剣術の才をゴドウィン卿に見出され、彼の強い推薦を受けて女王騎士に任命された。
8年前のアーメス侵攻が初の実戦であったにもかかわらず、他の女王騎士に全く劣らぬ戦果を残している。
冷静沈着というよりも冷酷非情。「目的のためには手段を選ばない」とは、彼のためにある言葉だと評する声が多い。
女王騎士でありながら女王家を裏切りゴドウィン派についたのは、ファレナを強大な国家にするにはゴドウィン卿のやり方が最善と確信しているためだという。
レルカーに放火したのも、○○軍を動揺させ迅速に撤退するために最善と判断したからそうしたまでなのだろう。
同じ女王騎士の一員であったカイル氏は「あの時は驚いたけど、考えてみりゃあいつならやりかねないよなー。予想しなかったオレも甘かったかも」と語っている。
 
 
 

黎明新報 第3号

 
1面記事 〜ニセ殿下事件、黒幕はバロウズ家〜
王子殿下を山賊の首領とする噂について調査していた殿下らは、セーブル近郊の乱稜山において山賊団の捕縛に成功。殿下の名をかたっていた首領の身柄も確保した。
さらに彼等の証言から、バロウズ家のユーラム氏が殿下の世評をおとしめるために犯行を計画していた事実が明らかになった。
王子殿下らはこの計画を逆手に取ってユーラム氏をセーブルにおびき出し、民衆の前で真相を暴露。みごと汚名を晴らした。
ユーラム氏のあまりの卑劣さ、元老家の次期当主の所業とも思えぬ稚拙さに、セーブル民衆も怒りと侮蔑をあらわにしたという。
 
2面記事 〜セーブル兵団、王子殿下の陣営に合流〜
ニセ殿下事件の解決を受け、領主ラウルベル卿は王子殿下に対する全面的な支持を表明。ダイン氏率いるセーブル兵団主力を殿下の指揮下に編入させることを宣言した。
また、ニセ殿下こと山賊団首領ロイ氏も、○○軍への参加を条件に罪を許され、○○城に身柄を移された。氏は殿下に恭順の意を示しているという。
 
連載 〜第3回 ユーラム・バロウズ〜
今回は、ニセモノを使って王子殿下の悪評を広めようとしたユーラム・バロウズ。
正直、この企画で取り上げるほどの人物とは思えない。が、本人にその意図がなかったとはいえ、彼の策は○○軍とセーブルを分断しかねなかったのであるから、ここで検証しておくことにする。
言わずと知れたバロウズ卿の次男。長男ヒラム氏は女王家の内紛の際に暗殺されているため、彼が次期当主と目されている。
知恵なし、力なし、根性なしの三重苦に加えて人望もないが、異常に執念深く、王子殿下を逆恨みしている。今後も殿下に対するイヤがらせを続けるかもしれず、ゴドウィンとは別の意味で厄介な相手である。
なお、妹であるルセリナ嬢によると、幼少時は仲の良い兄妹であったが、彼女が成長し父の仕事を手伝うようになると、ユーラム氏は不自然に距離を置くようになったとのこと。
リムスレーア姫に執着を見せ始めたのも、ちょうどそのころだという。
 
 
 

黎明新報 第4号

 
1面記事 〜暗殺者集団、ビーバーロッジを焼き討ち〜
昨夜未明、ビーバーロッジが何者かの襲撃を受け炎上、家屋の大半が消失した。幸い、現場に急行した王子殿下らの救援活動が功を奏し、死傷者は少数にとどまっている。
なお、殿下らによると、襲撃犯はゴドウィンの太陽宮襲撃にも参加した暗殺者集団・幽世の門であり、彼等のひとりは襲撃の目的がビーバー族の絶滅にあると明言したという。
ゴドウィン卿はかねてより、亜人種の存在によってファレナの歴史的・文化的同一性が損なわれているとの持論を展開しており、今回の襲撃の背景に彼の思想があることは疑いないものと思われる。
 
2面記事 〜ビーバー族、王子殿下と同盟へ〜
幽世の門の襲撃から一夜明けた朝、ビーバー族の長老フワラフワル氏は、王子殿下らが救援に駆けつけてくれたことに深い感謝の意を表わすとともに、殿下と同盟しゴドウィンに対抗する旨を公式に宣言した。
これまで戦乱への関与を避けて来たビーバー族であるが、ゴドウィン側がビーバー族の絶滅を企図している以上、中立維持は無意味と判断したためと見られる。
殿下もフワラフワル氏の申し出を快く受け入れ、歓迎の意を示した。
 
連載 〜第4回 ドルフ〜
ビーバーロッジ襲撃部隊を率いていたと見られるこの青年については、情報があまりにも少ない。
かの悪名高き暗殺組織・幽世の門の一員であり、太陽宮襲撃にも参加していたことは確実と思われるが、出生や経歴などは全くの謎に包まれている。
ただ、彼は幽世の門においては「ミカフツ」という名で呼ばれていたらしい。
この名は、8年前に解体された当時の幽世の門総帥・タケフツを思い起こさせるが、両者の関係については想像を巡らせるほかないようだ。
 
 
 

黎明新報 第5号

 
1面記事 〜レインウォール陥落、敵の手中に〜
ビーバーロッジ襲撃と呼応してレインウォールにもゴドウィン軍主力が突入、戦闘らしい戦闘もなく全市を制圧していたことが明らかとなった。
しかし、バロウズ卿がアーメスと結託してファレナ分割を画策した経緯もあってか、民衆の反応は極めて冷ややかで、自業自得との声も多く聞かれる。
 
2面記事 〜リオン嬢、ニセ殿下を一喝〜
常に控えめな態度で知られる王子殿下の護衛リオン嬢だが、先日のニセ殿下事件の際、殿下になりすましたロイ氏に対し珍しく怒りをあらわにし、強く反省を促していた事実が明らかになった。
ロイ氏が山賊を廃業し○○軍に合流したのは、彼女の言葉に説得された面も少なくないと推察される。
本紙記者の取材申し込みに対し、リオン嬢は「恥ずかしいです。聞かないで下さい」の一点張り。
ロイ氏は「なに言ってんだバーカ」と鼻で笑って立ち去った。
 
連載 〜第5回 サルム・バロウズ〜
レインウォールが陥落し、積年の宿敵であるゴドウィン家の軍門に降ることになったバロウズ卿。しかし、巷に同情の声はない。
考えてみれば、第2位継承権しかないファルズラーム姫を先代の女王陛下にとゴリ押しし女王家内紛を引き起こしたのもバロウズ卿。堰の建設を強行してロードレイク暴動の原因を作ったのもバロウズ卿である。
さらに黎明の紋章を隠匿した上、ファレナの半分をアーメスに売ろうとさえしたのだからもはや疫病神とも言えるだろう。
彼にしてみれば、侵略戦争をも肯定するゴドウィン派の台頭を抑え平和を維持しようとの意図もあったのだろうが、やり方があまりにも悪辣に過ぎた。
 
 
 

黎明新報 第6号

 
1面記事 〜ゴドウィン、リムスレーア姫戴冠を計画〜
確かな筋の情報によると、ゴドウィン側はアルシュタート陛下の喪が明けしだいリムスレーア姫の戴冠式を強行し、新女王にいただく計画を進めているという。
王子殿下との対決で劣勢に陥っている事態を少しでも打開し、国内外に自らの正統性を誇示する狙いがあるものと見られる。
これに対し、○○軍当局は「論評に値せず」としているが、不快感を隠さない幹部も多く、水面下で対策が進められていることは確実。
民の間でも、「陛下を亡き者にした張本人が今度は姫様を利用するのか」等と根強い反発の声が上がっている。
 
2面記事 〜ゴドウィン、戴冠式に各国使節を招待〜
リムスレーア姫の「戴冠式」を前に、ゴドウィン側は周辺各国に対し招待状を送っていたことが明らかになった。
送付先は群島諸国連合、アーメス新王国、赤月帝国、ガイエン公国などで、永らく国交が断絶したままとなっているナガール教主国にも送ったものと見られる。
各国ともファレナの状況を全く把握していないとは考えられず、今回の戴冠式に重大な疑義があることも当然承知しているはずであるが、国家間の外交儀礼上、招待に応じて慶賀使節を派遣して来るのではないかと予想される。
 
連載 〜第6回 ギゼル・ゴドウィン〜
リムスレーア姫の戴冠式が行われれば、半ば自動的に女王騎士長に就任することになるギゼル。
父・ゴドウィン卿の存在感が大きいためあまり目立たないが、彼を知る人々はみな「本当に危険なのはヤツ」と声を揃える。
例えば、闘神祭に巡らされていた巧妙な陰謀は、全て彼の仕掛けたものであったのだ。
ゴドウィン卿はある意味合理主義者で無駄を好まないが、ギゼル氏はそうではない。
必要の有無にかかわらず周到な罠を張り、他者を己の手の内で踊らせて楽しんでいるフシがうかがえる。
それだけに、女王騎士長となった彼がどんな手を打って来るか、予測が難しい。
 
 
 

黎明新報 第7号

 
1面記事 〜戴冠式、強行さる〜
昨日、ゴドウィン側は太陽宮においてリムスレーア姫の「戴冠式」を挙行、新たな女王陛下の即位を盛大に祝賀したと発表した。
また王子殿下に対して、リムスレーア陛下への恭順と反乱行為の即時停止を求め、ファレナ国民の結束を呼びかけている。
○○軍当局はこれを「拙劣な政治的遊戯にすぎず全く考慮に値しない」と切り捨てると共に、リムスレーア姫の不当な拘束と太陽宮の不法占拠を直ちに停止し降伏するよう改めて求めていく方針。
 
2面記事 〜王子殿下、群島諸国代表と会見〜
ゴドウィン側が戴冠式と称する催事の十数日前、王子殿下らはニルバ島に赴き、群島諸国連合の慶賀使節代表であるスカルド・イーガン提督と極秘会談を行っていた。
殿下は群島諸国がゴドウィン側に同調することのないよう求め、提督も肯定的な回答を示したものと見られる。
本紙記者は当時すでにこの情報を得ていたが「戴冠式」以前に公表することは王子殿下のみならずスカルド提督にも不利益をもたらすと判断し、掲載を見送っていた。
 
補足記事 〜本紙の立場について〜
ゴドウィン側はリムスレーア姫の即位を宣言していますが、本紙は今回の「戴冠式」を全く正当性のない無効なものであるとする王子殿下の見解を全面的に支持しております。
従いまして、紙上では今後も引き続き
王子様を「王子殿下」
リムスレーア様を「王女殿下」「姫様」
と表記して行く方針です。
読者諸賢のご理解とご支援をよろしくお願い申し上げます。
なお、紙面の都合により連載企画は休載させていただきます。
 
 
 

黎明新報 第8号

 
お知らせ 〜休刊のお知らせ〜
まことに勝手ながら、記者の都合により本紙の発行をしばらく休止させていただきます。
長期にわたるものではなく、次に大きな作戦があった際には報道を再開できると考えておりますので、しばしお待ち下さい。
 
 
 

黎明新報 第9号

 
1面記事 〜ドラート奪取 王子殿下の優勢、決定的に〜
王子殿下はゴドウィン側の要衝であるドラートに軍を展開。攻略に成功した。
戦闘のさなか、ドラートの民衆自ら城門を開け放ったことがゴドウィン軍の敗走につながった。
民衆は女王騎士がレルカーに火を放った事件を熟知しており、同様の事態を恐れて自主的に避難を開始したものと見られる。
ドラート奪取によって王子殿下はファレナ全土の3分の2以上を把握したことになり、圧倒的な優位に立った。
 
2面記事 〜黄昏の紋章、使用される〜
ドラート攻略戦は王子殿下の勝利に終わったが、ゴドウィン側はこの戦いに黄昏の紋章まで投入していた事実が明らかになった。
目撃者によると、問題の紋章を宿していたのは女王騎士アレニア。
しかし彼女は紋章を全く使いこなせず、危うく暴走させてしまうところだったという。
王子殿下らは、ゴドウィン側がファレナ女王家の象徴である紋章まで持ち出したことに強い不快感を表明している。
 
連載 〜第7回 アレニア〜
今回は、黄昏の紋章を宿してドラート攻略戦に現れた女王騎士アレニアを取り上げる。
彼女の剣術はやはり女王騎士であった父親に叩き込まれたものだという。
その父はアーメス侵攻で戦死しているが、彼女は「父が死んだのは弱かったからだ」と語り、父の跡を継いだとか、父の仇を討とうとしている等と言われることを嫌っている。
かねてよりゴドウィン派、というよりゴドウィン家そのものに対する強い親近感を隠しておらず、女王家を裏切った理由もそこにあると思われる。ザハークのように確固たる思想信条があってのことではないようだ。
外見とは裏腹に、感情で動くことの多い人物と言えるだろう。
 
 
 

黎明新報 号外

 
号外 〜エセルバルド家の系図発見〜
王子殿下はこのほど、さる人物からエセルバルド家の系図を入手した。エセルバルド家は100年前に没落したとはいえファレナ建国当時より続く名家中の名家であり、今回殿下が入手した系図にはその輝かしき歴史が鮮やかに記されているという。
骨董品としても歴史資料としても超一級と見られ、その価値は計り知れない。
しかし昨今、貴族の系図を狙う怪盗、通称カラスが出没していることから、王子殿下は探偵オボロ氏に系図の警備を依頼した。
記者の取材に対しオボロ氏は「カラスは三流以下のコソドロ。以前に捕まえたこともあるし、全く恐れる必要はない。ラクな警備ですよ」と笑顔で語っている。
系図は安泰と見て良さそうだ。
 
 
 

黎明新報 第10号

 
1面記事 〜リムスレーア姫、出陣か?〜
ゴドウィン側はこのほど、「新女王リムスレーア陛下御自らが反乱軍討伐に出陣される」との公式声明を発表した。
リムスレーア姫のご意志とはとうてい考えられず、ゴドウィン側に強要されたものとの見方が有力だが、王子殿下周辺は公式の見解を出していない。
記者の取材に対しルクレティア軍師は「予想の範囲内。慌てず騒がず対処するだけ」と涼しい表情で答えた。
 
2面記事 〜大穴に謎の人物出現〜
レインウォールの北にある「大穴」で、異様な風体の老人が目撃された。発見したのは、大穴の警備に当たっている○○軍の兵士。
証言によると、その老人は小柄なドワーフを連れており、神妙な表情で西の空をじっとにらんでいたとのこと。
兵士が声をかけても返事をせず、やがて大穴の底に入って行ったため追いかけたが、見つからなかった。
ちょうどドラート攻略戦が行われた日であり老人が見ていたのもドラートの方角ではあるが、まさか大穴からドラートが見えるはずもない。しかし老人には偶然で片づけるのをためらわせる雰囲気があったという。
 
連載 〜第8回 親征軍〜
今回は人物ではなく、ゴドウィン側が新女王親征と称する軍の陣容について予想してみたい。
戦場はおそらくドラート北東の平原と思われるので、お互い陸兵のみでの戦いになる。
ゴドウィン側で最強の陸兵はディルバ将軍の部隊だが、これはレインウォール周辺から動いていない。
とすると、親征軍の主力はソルファレナ駐留の王都守護軍。これをザハーク、アレニアら女王騎士が率いる形ではないだろうか。
通常、親征軍の指揮は女王騎士長がとるものだが、現在の太陽宮が「通常」でないことは言うまでもなく、ギゼルが出て来るかどうかは微妙なところだろう。
 
 
 

黎明新報 第11号

 
1面記事 〜ドラート北東会戦、王子殿下の勝利〜
王子殿下の軍勢は南下して来たゴドウィン軍主力とドラート北東にて交戦、これを撃退した。
ゴドウィン軍にはリムスレーア姫も同行していたが、軍中枢とともにソルファレナまで撤退したと思われる。
ゴドウィン側は「反乱軍はついに女王陛下ご自身にまで弓を引いた」と非難する声明を出しているが、民衆は単なる負け惜しみと受け止めており、姫様の御身を危険にさらしたゴドウィンこそ責められるべきとの声も強い。
 
2面記事 〜リオン嬢、重傷〜
ドラート北東の会戦において、王子殿下の護衛を務めるリオン嬢が瀕死の重傷を負っていたことが明らかになった。
シルヴァ医師の懸命の治療により一命はとりとめたものの、現在も意識不明の重体。
○○城内に会戦の勝利を喜ぶ空気はなく、リオン嬢の存在の大きさが改めて実感されている。
 
連載 〜第9回 女王騎士〜
ドラート北東会戦では、ファレナ女王家を守護する要であるはずの女王騎士が敵味方に別れて激突することになった。
そこで今回は、女王騎士そのものに焦点を当ててみたい。
その歴史はファレナ建国当時にさかのぼるが当初は王都守護騎士団と同義であり、数百名の規模を有していたと言われる。
しかし、ソルファレナ遷都の際に王都守護兵団が別に組織され、女王騎士は女王陛下とその近親者のみを守護する文字通りの「騎士」となったのである。
その数は大幅に削減され、多い時でも10名に満たないが、それゆえにこそ女王騎士に選ばれることはファレナ最高の剣士と認められることに等しく、これ以上はない名誉だ。
その名誉を担う者たちの中にゴドウィン派の手先に成り下がった者がいることは、まことに嘆かわしい限りである。
 
 
 

黎明新報 第12号

 
1面記事 〜王子殿下、竜馬騎兵団との会談へ〜
王子殿下はこのほど、竜馬騎兵団首脳と会談を行うためサウロニクス城を訪問する。
竜馬騎兵団はファレナ国内の紛争への関与を禁じられており、ただちに支援を得ることは難しい。しかし、劣勢に陥ったゴドウィン側が国外勢力と結託する可能性も否定できないため、あらかじめ協力態勢を協議しておく必要があるとの判断があるものと見られる。
 
2面記事 〜ハスワール斎主、ルナスに帰還か〜
ゴドウィン派のソルファレナ占拠以後、ルナスのハスワール斎主はリムスレーア姫を支えるため太陽宮に入っていたが、先日の「戴冠式」を期にルナスに戻ったとの報が入った。
現在のソルファレナ周辺は厳重な情報統制下にあり、確認は困難だが、複数の経路から同様の噂が伝わっている。
 
連載 〜第10回 サイアリーズ〜
彼女を本企画で取り上げなければならないのは非常に残念であり、記者個人の心情としても痛恨の極みである。
しかし、ドラート北東会戦においてリムスレーア姫救出作戦を妨害したのはまぎれもなく彼女であり、もはや「敵」であると断定せざるを得ない。
彼女はなぜ敵に回ったのであろうか?
十年ほど前、ファルズラーム陛下はバロウズ家の後押しで玉座についたのだが、それにもかかわらずバロウズ家の権勢が強くなりすぎることを警戒した。
そして、元老間の勢力均衡を保つために次女サイアリーズとゴドウィン家のギゼルを婚約させたのである。
しかし、当時のふたりは政略で婚約させられたことをまるで苦にしておらず、喜んでさえいたらしい。特にギゼルの側はサイアリーズに崇拝に近い感情を抱いていたという。
彼女がゴドウィン側に走った理由をここに求めるのは、ゲスの勘繰りのそしりをまぬがれないだろう。だが、他に説明がつかないことも確かなのである。
 
 
 

黎明新報 第13号

 
1面記事 〜竜馬騎兵団、他国介入の際の協力を確約〜
サウロニクス城にて竜馬騎兵団のクレイグ・ラーデン団長と会談した王子殿下は、国外からの武力介入に際しては竜馬騎兵団の全力を以て対処するとの確約を得た。
会談は終始なごやかな雰囲気の中で行われ、クレイグ団長は王子殿下に対する共感を隠さなかったという。
単に竜馬騎兵団の義務を確認するのみにとどまらず、ゴドウィン側が他国からの支援を受ける危険性についての認識を共有し、協同して事態に当たるとの合意を得られたことは大きな成果であると、○○軍首脳は語っている。
 
2面記事 〜リオン嬢、回復〜
王子殿下が竜馬騎兵団から帰還した直後、昏睡状態にあったリオン嬢の容態が好転、意識を回復した。その後の経過も順調という。
王子殿下が黎明の紋章の新たな力を使い、リオン嬢を救ったとの証言もあるが、詳細は不明。
○○城内は久々に明るい空気に包まれている。
 
連載 〜第11回 怪生物〜
王子殿下らはサウロニクス城からの帰途、深き薄明の森の遺跡を調査したとのことだが、その際、動く巨大植物に遭遇し、戦闘を余儀なくされたという。
セラス湖の水門の役割を果たしている遺跡にも、巨人の姿をした謎の怪物が出現したとの証言もある。
これらは我々の常識では理解できない存在であり、ある意味では恐るべき「敵」と言えるだろう。
彼等が出現する場所はシンダル文明の遺跡に限られているようだが、何か理由があるのだろうか?
 
 
 

黎明新報 第14号

 
1面記事 〜ゴドウィン、反攻開始か〜
昨日未明、ゴドウィン軍主力がドラートを急襲。市街を完全に制圧した。
ほぼ同時に、エストライズにアーメス西海兵団、セーブルに同南岳兵団が来襲、両市を占拠したとの報が入っている。
ゴドウィン側がアーメス軍と同盟を結んだものと見られ、王子殿下は一気に劣勢に立たされることとなった。
ただし、○○軍ではこの事態を予測して詳細な避難計画を策定していた。
セーブルでは計画に沿って迅速に避難が行われ、ひとりの犠牲者も出なかったという。
ドラートでも避難は整然と進められたが、親ゴドウィン派の住民はこれに応じず街に残留した。ゴドウィン軍が彼等をいかに処遇するか憂慮される。
エストライズでは敵上陸にもかかわらず戦闘が行われていないとの報もあり、情報が錯綜している。
 
2面記事 〜ゴドウィンとアーメス、同盟の謎〜
ゴドウィン卿の持論である「太陽の紋章の力によって周辺国を制圧しファレナの覇権を確立すべし」との主張において、まず第一に念頭にあった「周辺国」がアーメス新王国であることは周知の事実である。
アーメス側もこのことは当然承知しており、ゴドウィン派に対する敵意を隠そうとはしていなかった。
それだけに、今回の同盟については全く理解に苦しむところである。
ゴドウィン側がアーメスに大きな見返りを約束したものと見られるが、その内容は憶測の域を出ない。
 
連載 〜第12回 キルデリク〜
今回は新たに女王騎士に任命されたというキルデリクを取り上げる。
しかし、彼もドルフと同様、わかっていることは驚くほど少ない。ギゼルの代理人を務める闘技奴隷として闘神祭に現れたことは誰もが知っているが、それ以前にどこで何をしていたかは全くの謎なのである。
確実なのは、幽世の門の一員であることくらいと言えるだろう。
ただ、幽世の門の暗殺者はあまり感情を表に出さないのが普通であり、残忍な言動を好む彼は異質である。ドラート制圧後、かなり残虐な粛正を行っているとのウワサもある。
今後、様々な意味で○○軍の大きな敵となるだろう。
 
 
 

黎明新報 第15号

 
1面記事 〜竜馬騎兵団、動かず〜
アーメス軍の侵攻を受け、王子殿下は自らサウロニクス城に急行。竜馬騎兵団の出撃を要請したが、クレイグ・ラーデン団長はこれを拒否した。理由さえ語らなかったという。
ゴドウィン側が何らかの策を用いて竜馬騎兵団を抑えているとの見方が有力だが、その当否を調査し対処する余裕はすでにない。
 
2面記事 〜ケイヴドワーフ、王子殿下に協力〜
ゴドウィン側はケイヴドワーフに対しても暗殺者を派遣し、ビーバー族同様に絶滅をはかっていたことが明らかになった。
王子殿下ら一行は、サウロニクス城に向かう途中でケイヴドワーフの住居がある地下水脈を通過。この際、暗殺者の活動を知り、これを撃退したという。
ケイヴドワーフはこの事件を受けてゴドウィンとの対決を決意。○○軍に加わる道を選択した。
 
連載 〜第13回 幽世の門〜
ドワーフたちを襲っていた幽世の門の暗殺者は王子殿下の活躍によって倒されたが、その際に彼等は「烈身の秘薬」と呼ばれる薬を使用したという。これは、一時的に常人をはるかに越える筋力を得られる代わり、効力が切れればまず確実に命を落とすという極めて非道な薬物である。
かつての幽世の門には、薬物の開発を専門に行う部門があったとされている。闘神祭や太陽宮襲撃で使われた眠り薬「冥夢の秘薬」やこの「烈身の秘薬」もその部門の作品に間違いないだろう。
一連の事件でこれほど薬物が使用されているということは、薬物部門も復活しているのであろうか?
 
 
 

黎明新報 第16号

 
1面記事 〜ロードレイク、レルカーも陥落〜
ロードレイクに迫るアーメス南岳兵団、およびレルカーに迫るゴドウィン軍主力を迎え撃つべく、○○軍は両市前方に進出。果敢な防衛戦を展開した。
しかし戦力差は絶望的であり、両市の防衛部隊とも戦線を維持できず後退。敵軍の両市侵入を許す結果となった。
ただし、部隊が時間を稼いでいた間に民衆の避難は完了しており、○○軍首脳は当初の目的は達成されたとしている。
 
2面記事 〜○○軍、窮地に〜
ロードレイクとレルカーを失ったことにより○○軍に残されたのは事実上ラフトフリートと○○城のみとなった。
幸い物資は豊富なため籠城戦となってもしばらくは持ちこたえられると思われるが、それでも戦力差を考えると楽観的になれる要素は全くない。
しかしルクレティア軍師に焦りは見られず、王子殿下らも平静を保っているようだ。
周辺では、籠城戦に対する不安と、起死回生の妙手があるに違いないとの期待が語られている。
 
連載 〜第14回 ジダン・ギュイス〜
セーブル、ロードレイクを陥落させたアーメス南岳兵団。その先鋒を務めるジダン・ギュイスが、かつてバロウズ卿と共謀していたことを記憶している読者も少なくないだろう。
昨日はバロウズ、今日はゴドウィンと節操のないことだが、どうも彼はもともとそういう人物のようである。
アーメス出身者に取材しても、「南岳神将マハ・スパルナに取り入ることで出世して来た俗物」「信念や誇りとは無縁な男」との評価しか出て来ない。
しかし、だからこそ欲望に忠実に行動している際の戦闘力には侮れないものがある。
 
 
 

黎明新報 第17号

 
1面記事 〜○○城、奪還〜
城を脱出し、文字どおり地下に潜っていた王子殿下だが、このほど無事○○城への帰還を果たした。
竜馬騎兵団との協力関係を復活させた殿下は城の奪還を前にまず遺跡の水門を閉じてセラス湖の水位を上げるという奇策を実行。○○城を占拠していた敵軍はこれで完全に浮き足だち、潰走した。
 
2面記事 〜ゴドウィン、竜馬騎兵団を脅迫〜
アーメス軍の侵入に際して竜馬騎兵団が出撃しなかったのは、ゴドウィン側が卑劣な工作を行ったためであったことが、このほど明らかになった。
彼等は竜馬の卵や幼体を人質に取り、サウロニクス城に対して沈黙を守るよう強要していたという。
王子殿下の活躍によってこの事態は解決を見たが、竜馬騎兵団はゴドウィン側の暴挙に強い憤りを表明している。
 
補足記事 〜アーメス西海兵団、本国に撤退〜
ゴドウィン軍とアーメス南岳兵団が○○城から敗走した直後、エストライズに上陸していたアーメス西海兵団も、一切の戦闘行動を行わないままアーメス本国に帰還した。
長期の占領にもかかわらず、エストライズに被害らしい被害はないという。
未だセーブルの占拠を続ける南岳兵団を見捨てた形だが、西海兵団を率いるヴァルヤ家はもともと対外穏健派として知られている。
今回は、強硬派の牙城である南岳兵団の独走を牽制する意味で形だけの派遣を行ったのではないかとの見方が有力。
 
 
 

黎明新報 第18号

 
1面記事 〜ドラート、セーブルも奪還〜
○○城から敗走した敵軍に対し王子殿下は追撃部隊を派遣。ゴドウィン軍主力が立てこもるドラート、およびアーメス南岳兵団が占拠するセーブルでの戦闘にそれぞれ勝利し、両市を解放した。
○○軍はアーメス軍侵攻以前の勢力範囲を回復したことになる。
このふたつの戦いにおいて、ゴドウィン側の水軍頭領バフラム・ルーガー将軍、およびアーメス南岳兵団のジダン・ギュイス将軍の死亡が確認されている。
 
2面記事 〜王子殿下、アーメス南岳兵団を撃退〜
アーメス南岳兵団追撃の指揮に当たった王子殿下は、ダイン氏らと共に敵が立てこもるセーブル市内に突入。敵将ジダンを倒し、アーメス軍を完全に駆逐した。
なお、現地からの情報によると、先にセーブルに入っていた南岳神将マハ・スパルナはジダンが防戦に務めている間に密かに脱出し、アーメス本国に撤退していたという。
しかも、セーブルの南の門を破壊して完全に封鎖、王子殿下の追撃を受けないよう工作していた。これによってジダンらも退路を断たれてしまい、玉砕するほかなかったと思われる。
 
連載 〜第15回 マハ・スパルナ〜
子飼いだったはずのジダンをいとも簡単に見捨てた南岳神将マハ・スパルナ。しかし、そうまでして逃げ込んだアーメス本国は、彼女を温かく迎えてはくれなかったようだ。
アーメスは五つの大部族が連合した国家で、マハのスパルナ家は五大部族のひとつダルジャ族の名家である。
今回のファレナへの侵攻はこのダルジャ族がゴドウィンと結託することによって行われたのだが、当初から軽率ではないかと懸念する声は少なくなかったらしい。ジャラト王も決して乗り気ではなかったようだ。
それが失敗に終わったことで面目を失ったダルジャ族は、責任の全てをマハひとりに負わせようとしているのだという。
彼女はゴドウィン派にいいように利用された上、自分の部族にも裏切られたことになるわけだが、それもこれも彼女自身の強欲さが招いた結末であり、自業自得である。
ファレナとしては、アーメス国内でダルジャ族の立場が弱くなり、対外穏健派のイシュヴァーク族やマドラ族が主導権を握ったことを歓迎すべきであろう。
 
 
 

黎明新報 第19号

 
1面記事 〜ゴドウィン家の牙城、崩壊〜
このほど○○軍はゴドウィン家の本拠であるストームフィストに部隊を展開し、激戦の末、攻略に成功した。
この戦いにおいては、元闘技奴隷の一団が○○軍側に立って参戦、勝利に大きく貢献したという。
ゴドウィン家当主マルスカール以下の主力はソルファレナに移っているため、これでいくさに決着がついたわけではない。
しかしこの戦いでディルバ・ノウム将軍と女王騎士キルデリクが戦死しており、居城を失ったこともあわせてゴドウィン派には大きな痛手であると見られる。
 
2面記事 〜黄昏の紋章の主はサイアリーズ女史〜
ストームフィスト攻略戦において、ゴドウィン側は再び黄昏の紋章を使用。前回とは比較にならない威力を示したが、今回の紋章の主は女王騎士アレニアではなく、王子殿下の叔母君サイアリーズ女史であったという。
彼女の行動には不可解な点が多く、○○軍首脳は懸念を深めている。
 
連載 〜第16回 ディルバ・ノウム〜
ストームフィスト攻略戦にて王子殿下と戦い倒れた彼は、武人の中の武人として名高く、ウィルド卿らからはその死を惜しむ声も上がっている。
盟友バフラム将軍と同様、ゴドウィン側についてしまったことが彼の不幸であるが、その理由もまた彼らしいものだったと言える。
8年前のアーメス侵攻の際、敵の無法に憤るあまりディルバの部隊はルクレティア軍師の作戦から逸脱して先行。敵中で孤立してしまった。その時、敵の包囲を破って彼等を救出したのがマルスカール率いるゴドウィン家の部隊だったのである。
以後、彼は受けた恩義を決して忘れず、マルスカールのために力を尽くした。
その結果として死を迎えたことは、彼にとって本望だったのだろうか。
 
 
 

黎明新報 第20号

 
1面記事 〜太陽宮奪還、リムスレーア姫を救出〜
王子殿下率いる○○軍はついに王都ソルファレナに突入。ゴドウィン派の勢力を一掃し、太陽宮に軟禁されていたリムスレーア姫の救出にも成功した。
ゴドウィン派の太陽宮襲撃から始まった長い戦いは、これでようやく終局を迎えることになる。
 
2面記事 〜ゴドウィン卿、太陽の紋章を奪い逃走〜
女王騎士長を僭称したギゼル・ゴドウィン、および彼に従った女王騎士ザハーク、アレニアらも戦死し、ゴドウィン派はほぼ壊滅したと言っても過言ではない。しかし当主マルスカール・ゴドウィンを含む残党は太陽の紋章を強奪して逃亡している。
その行方は未だつかめておらず、情勢はなお予断を許さない。
 
連載 〜第17回 マルスカール・ゴドウィン〜
手勢のほとんど全て、そして唯一の肉親であるギゼルまでも失ったというのに、マルスカールは何をしようと言うのだろうか。
彼には幼少時から非常に仲のいい従兄弟がいて、成人後も親しいつきあいが続いていた。
この従兄弟が、シャスレワール姫の夫となったマルダースである。
また、彼と妻ロザリンドとは周囲の羨望を集めるほど仲むつまじい夫婦であった。
そのふたりを女王家内紛で失ったことが、彼の現在の行動に影響しているのかもしれないが、だからと言って許されるものではあるまい。
 
 
 

黎明新報 第21号

 
1面記事 〜フェイタス河が異常増水〜
ルナスからの報告によると、フェイタス河の水量が異常に増加しており、急速に水位が上がりつつあるという。
○○軍首脳は、逃亡中のマルスカールらが太陽の紋章を使用してアストワル山脈の氷河を融かしているのではないかと推測。王子殿下自ら直ちに現地に向かう方針を表明した。
 
2面記事 〜ヤシュナ村の温泉、復活か〜
原因不明の湯量減少から、村自体の存続が危ぶまれていたヤシュナ村だが、最近になって急に湯量が回復。営業を縮小していた温泉旅館も通常営業に戻った。
旅館関係者らは「いくさも終わったし、これからが稼ぎ時」と満面の笑みで語っている。
 
連載 〜第18回 太陽の紋章〜
27の真の紋章のひとつであり、我等がファレナ女王国の象徴でもある太陽の紋章。しかしそれは我々に対し恐るべき牙をむいた。そして今もなお、マルスカールの手中にある。
ツヴァイク氏らの調査によると、マルスカールが太陽宮に持ち込んだ石版には太陽の紋章の力を引き出す方法が記されていたという。
マルスカールが今もその方法を使えるとしたら、我々は太陽の紋章を「敵」として戦わなければならないのだろうか。その戦いに勝利はあるのだろうか。
多くの関係者は、王子殿下の黎明の紋章とリオン嬢の黄昏の紋章が鍵を握るのではないかと語っている。
 
 
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