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古い本一覧 タイトル画像

 
 

古い本1 「創世の物語」

 
最初に「やみ」があった。
「やみ」は長い長い時のはざまにただ独りその身を横たえていた。
果てしない孤独に耐えかねた「やみ」はついに「なみだ」を落とした。
「なみだ」からふたりの兄弟が生まれた。
「剣」と「盾」である。
「剣」は全てを切り裂くことができると言い、「盾」は何者にも傷つけられないと言った。
そしてふたりは戦うこととなった。
戦いは7日7夜続いた。
「剣」は「盾」を切り裂き、「盾」は「剣」を砕いた。
「剣」のかけらが天空となり、「盾」のかけらが大地となった。
戦いの火花が星となった。
そして「剣」と「盾」を飾っていた27の宝石が「27の真の紋章」となり、世界が動き始めたのである。
 
 
 

古い本2 「太陽の紋章と夜の紋章」

 
かつて太陽の紋章と夜の紋章はふたつで一対をなす存在として世界に生まれ出でた。
彼等は強い「絆」で結び合わされ光と闇とを司った。
しかしいつしか夜の紋章は太陽の紋章のまぶしすぎる輝きをうとましく思うようになっていた。
耐え忍ぶことをやめた夜の紋章はついに自らの身を剣に変え、「絆」を断ち切っていずこかへ去った。
あとに残された「絆」のかけらから黎明の紋章と黄昏の紋章が生まれた。
ふたつの紋章は半身を失った太陽の紋章に付き従い守り続けているという。
 
 
 

古い本3 「幽世の門」

 
長きに渡りファレナ女王国の権力を影から支え続けた力であり、しかしまたその非人間性ゆえに心ある人々の非難を浴び続けていた暗殺者集団・「幽世の門」は、先年、アルシュタート陛下とフェリド閣下のご英断により廃止が決定された。
しかし幽世の門の側は解散命令に服従せず、5人の幹部のうち唯一、諜報部門の長シナツのみが協力したにとどまった。
破壊工作部門の長であったヒノヤギは命令に激しく抵抗。闘争を繰り広げたのち、女王騎士たちの手で制圧され、捕えられる直前に自決した。
暗殺者養成部門の長であったカヤヌ、及び暗殺実行部門の長であり、幽世の門全体を統括する総帥でもあったタケフツは、ナガール教主国に逃亡したとされる。
薬物開発部門の長であったツラナミは完全に消息を絶っており、その後の所在を示す情報は一切得られていない。
彼等5大幹部が表向き姿を消したのち、幽世の門は速やかに解体され、ファレナ女王国の武力組織は正規軍のみで構成される健全な形に生まれ変わった。
しかし、行方がつかめていない3名の幹部、及び彼等と行動を共にしている暗殺者たちの今後の動向が懸念される。
 
 
 

古い本4 「古代アーメス王朝」

 
はるか太古、シンダル族の来訪よりもさらに数百年をさかのぼる過去、この地にはひとつの強大な王朝国家が勢威を誇っていた。
古代アーメス王朝である。
太陽の紋章の加護を受けた王朝は繁栄を極め、その版図には現在のファレナ女王国・アーメス新王国・ナガール教主国の全域が含まれていた。
しかしある時、王の乱心により太陽の紋章が暴走。広大な王国は一夜にして滅び去り、乾いた荒野に成り果てたという。
この王朝の都は現在のファレナ女王国中部、アムドアト山周辺にあったのではないかと考えられているが、それを証明するような遺跡等は発見されていない。
もっとも、太陽の紋章で跡形もなく焼き払われてしまったとすれば、王都の遺跡が発掘される可能性はまずないであろう。
なお、現在のアーメス新王国はこの古代アーメス王朝を継承する国家と自称しているが、民族的にも文化・文明的にも古代王朝とのつながりは全くない。
古代アーメス王朝に比肩し得る大国家の建設を目指す、との政治的宣言であると解釈すべきである。
余談ながら、現在では大多数の人々にとって「アーメス」とはアーメス新王国を意味するため、古代アーメス王朝のことは単に「古代王朝」あるいは「古代国家」と呼称する場合が多い。
 
 
 

古い本5 「女王家の内紛」

 
この悲劇は、新都暦210年代末、オルハゼータ陛下の治世に端を発する。第2位の女王位継承権者であるはずのファルズラーム姫が姉君シャスレワール姫の第1位継承権放棄、及び自らの第1位昇格を求め、元老院の多数派工作を始められたのである。
背後には、ファルズラーム姫に一族の者を婿入りさせていたバロウズ家の策動があったと言われている。
オルハゼータ陛下、シャスレワール姫ともに夫君がゴドウィン家の出身であったため、権力中枢への影響力低下を恐れたバロウズ家がファルズラーム姫を扇動したというのだ。
この説の真偽は定かではないが、ファルズラーム姫ご自身にも玉座への野心がおありだったことは事実のようである。
事態は直ちに、姫君おふたりをそれぞれ後見するゴドウィン家とバロウズ家、さらに両家に従属する貴族まで巻き込んだ対立へと発展して行った。
かつては英明果断を以て知られたオルハゼータ陛下もすでに老境に入られており、ことを収めるだけのお力は残されていなかった。
表だっての武力行使にはいたらなかったものの、権謀術数の限りを尽くした暗闘が繰り広げられた。その頂点とも言えるのが、アルシュタート姫の闘神祭である。
シャスレワール姫のご息女ハスワール姫の方が年長であり、継承順位も上であるにもかかわらず、ファルズラーム姫とバロウズ卿はオルハゼータ陛下を執拗に説得し、ファルズラーム姫のご長子アルシュタート姫の闘神祭を先に強行した。ファルズラーム姫の継承権優越を既成事実化せんとの企みであったことは言うまでもない。
だが、この闘神祭でアルシュタート姫の夫君の座を射止めたのは、異国から来たひとりの青年であった。
仮にバロウズ家かゴドウィン家が優勝した場合、敗れた側が武力蜂起する可能性もあると予想されていただけに、この結果は皮肉にも対立の沈静化をもたらした。
しかしその平穏も、226年にオルハゼータ陛下が崩御されるまでのことであった。実際の玉座を目前にして、陛下の喪も明けぬうちから対立が再燃。またたく間に血で血を洗う抗争へと突き進んで行ったのである。
その抗争の中で猛威をふるい、事態を惨劇へと導いたのが、あの幽世の門であった。
彼等は女王陛下に直属すると定められているのだが、この時は玉座が空位であるのを良いことに、シャスレワール姫とファルズラーム姫の両陣営から暗殺を請け負った。どちらが即位される結果になっても組織の勢力を保てるようにとの意図があったことは疑いないが彼等のこの行動は太陽宮にかつてない流血をもたらすことになった。
ゴドウィン家、バロウズ家の双方に犠牲者が出たばかりか、当事者であるふたりの姫の夫君までも共に凶刃に倒れたのである。
ことここに至り、もともと性格的にお強いとは言い難かったシャスレワール姫は争い続ける気力を失われ、女王の位を妹君にお譲りになった。
しかし、すでに猜疑心の塊となられていたファルズラーム姫はこれさえも姉君の策略ではないかとお疑いになり、幽世の門に姉君の殺害をお命じになってしまわれた。
そして、ようやく即位なさったファルズラーム陛下も、わずか2年後に病で崩御される。流れた血に比してあっけない終幕であった。
この内紛がファレナ女王国に残した傷は、たやすく癒えるものではあるまい。
ただ、アルシュタート姫やサイアリーズ姫、ハスワール姫が、母君様がたの轍を踏むことだけは決してなきようにとお心を砕かれ、お力を合わせておられることは、確かな救いであると感じられるのである。
 
 
 

古い本6 「ファレナ女王国とシンダル族」

 
かつてこのファレナの地には、シンダル族と呼ばれる者たちがいた。彼等は現在の我々など及びもつかぬ高度な文明を誇っていたが、なぜかこの地を離れ、いずこかへ去って行ったとされている。
彼等は多くのものを遺しており、我々に彼等の実在を確信させてくれる。
例えば、深き薄明の森にある遺跡は我々の水準をはるかに越える技術で築造されており、シンダル族のものであることを疑う専門家はいない。
しかし遺跡ばかりではなく、このファレナの大地そのものがシンダルの遺産であるとの説がある。
古代アーメス王朝の滅亡と共に焦土と化した大地を、その後に訪れたシンダル族が何らかの方法で緑あふれる豊かな土地に戻したのではないかと言うのだ。
また、シンダル族が姿を消してしまった理由についても何もわかっていないが、「全てのシンダル族が去ったわけではない」と主張する研究者もいる。
太陽の紋章を携えてルナスに降臨されたと伝えられる初代女王陛下こそ、実はシンダル族の一員だったというわけである。
さすがに荒唐無稽な印象を禁じ得ないが、しかし太陽の紋章の封印像にはシンダル族の遺物との共通点が多く見られるのも事実でありさらなる検証が求められている。
 
 
 

古い本7 「一騎討ちの極意」

 
相手が「防御」態勢を取っていても着実に手傷を負わせるには、「攻撃」あるのみ。
一撃で大きな成果を得ることは難しいが、この地道な行動が君を勝利に導く。
「攻撃」して来る相手には必ずスキがある。それが見えた時こそ、「必殺」の一撃を放つ好機である。
逆に相手が「必殺」を狙っている場合は、冷静に「防御」の構えを取ることが肝要だ。相手の技を受け流し、同時に痛烈な反撃を加えることができるだろう。
さらに重要なのは、相手の出方を瞬時に見極め迅速に行動を決定することである。判断力に欠ける者は必ず倒れ伏すのみだ。
なお、お互いの「攻撃」がぶつかり「つばぜり合い」になってしまうことがある。ここで勝敗を決するのは、ただ力のみ。押して押して押しまくれ。
最後にもう1つ。
追い詰められた相手は、捨て身の反撃をしかけて来るかもしれない。その時、君は一瞬で判断を下す必要がある。
この判断を誤れば、待っているのは・・・。
以上、武運を祈る。
 
 
 

古い本8 「戦争 部隊の全て」

 
歩兵は、盾や重装甲で矢を防ぎつつ進軍するが、機動力に乏しく騎兵には弱い。
騎兵は、その機動力で歩兵を蹂躙する。ただし装甲が薄く、弓攻撃には弱い。
弓兵は、軽装備の騎兵には強いが、矢が効きづらい歩兵には弱い。
 
白兵船は、多くの歩兵を乗せ、相手の船に移乗させて戦いを挑む。しかし甲板上の歩兵は無防備であるため、弓攻撃に弱い。
体当たり攻撃に特化した船が突撃船である。装甲が厚く、弓で攻撃されても大きな損害をこうむることはないが、乗員の少なさゆえ白兵船に接舷されると弱い。
弓船は甲板上に多くの弓兵を配置し遠距離攻撃を専門に行う船である。白兵船には強いが突撃船には弱い。
 
弓隊や弓船の中には、部隊名に「紋章」とつくものがある。これらの部隊は、回数に制限はあるものの強力な魔法攻撃を行うことができるので、活用すべし。
部隊の強弱は、隊長となる者の能力によって大きく違って来る。部隊編成の際には、いろいろと試行錯誤してみるのがいいだろう。
 
 
 

古い本9 「戦争 戦術大全」

 
一軍の将たる者、ただいくさに勝てばいいなどという了見ではとうてい務まらぬ。
自軍の損害を最小限に抑え、なおかつ迅速に勝利を得ることを理想としたい。
 
1.進軍は迅速に
戦争終結までの時間が短ければ短いほど人的損害は抑えられ、また勝利によって多くのものを得られるだろう。
 
2.敵をおびきだせ
敵本隊の全滅が目的ならば、その本隊を裸にしてやればいい。本隊の周囲にいる敵部隊を可能な限り分断して個別におびき出し、引き離してやるのだ。
 
3.深追いするな
調子に乗って敵陣深くに侵入しすぎると、敵部隊に包囲され後退できなくなってしまう。いかに精強を誇る部隊であっても、多数の敵と立て続けに交戦を強いられては消耗を免れないだろう。
 
4.敵部隊を全滅させろ
敵部隊は、価値の高い装備品や貴重な物品を所持している場合がある。これらを入手するには、該当する部隊を全滅させなければならない。
今後のいくさを有利に進めるためにも、勝利品の獲得は重要である。
 
 
 

古い本10 「合体魔法」

 
紋章魔法を研究する過程において、複数の紋章の同時使用による強力な上位魔法の発動を確認した。
その概要をここに記す。
まず、この現象が発生するのは五行の上位紋章を使用した場合に限られる。
烈火、雷鳴、流水、旋風、大地、以上の5種である。
これらのうち異なる2種を2名の術者が宿し、同レベル魔法を同時に詠唱すると、相互干渉によって強大な効果が得られるのだ。
ただし、どの2種でも良いわけではなく、組み合わせはかなり限定されるようだ。
烈火と雷鳴で「火炎陣」
雷鳴と流水で「雷神」
流水と旋風で「水竜」
旋風と大地で「風烈牙」
大地と烈火で「焦土」
以上、5通り以外の組み合わせでは合体魔法の発動は確認できなかった。
なお、自明の理ではあろうが、2名の術者が詠唱する魔法のレベルが高いほど合体魔法の威力も増大することを付言しておく。
個人的な推測だが、黎明の紋章と黄昏の紋章の組み合わせでも同様の現象が発生するのではないだろうか。
両者を手にする機会があれば、ぜひ試してみたいものである。
 
 
 

古い本11 「交易の手引き」

 
1.安く買って高く売れ!
商売の基本中の基本。
逆だと損をしてしまう。こんなこともわからない者はそもそも商売に手を出してはならない。
 
2.足を使え!
町によって交易品の値段は全然違う。
安く買える町、高く売れる町、自分の足でしっかりと探し出しておくこと。
 
3.噂を信じろ!
交易所で聞ける噂に、ウソはない。
交易品の値段が激変している時は、大もうけの機会でもある。
よく聞いておくように。
 
4.実績を積め!
交易の実績を積むと、もっと割のいい品を扱わせてもらえるようになる。
利幅は薄くとも、人々の生活に必要なものをコツコツと商って行けば、きっと認められるだろう。
 
締めくくりとして、大商人への一歩を踏み出した君にこの言葉を贈ろう。
「すべて商人たるものは、一旦の利に誇ることなく、一旦の損に驚くことなかれ」
 
 
 

古い本12 「フェイタス竜馬騎兵団」

 
ファレナ南西部に棲息する竜馬は、恐ろしげな外見とは裏腹に穏和で高い知能を持つ。人間の良き友人になり得る存在だ。
周辺の住民が彼等と生活を共にするようになり、共同体が形作られて行ったのは、自然な成り行きであった。
この共同体が竜馬騎兵団の原型である。
当初、彼等は女王の支配に服さぬ流民と見なされ、ラフトフリート同様の弾圧を受けた。
しかし竜馬の機動力を武器とする彼等は容易には屈せず、長期にわたって女王国中央と対峙し続けた。現在のスピナクス港付近から南が彼等の独立領に近い状況になっていた時期もあった。
この対立関係が一変したのは、ナガール教主国の建国に始まる一連の紛争の際である。
南方小国家群を統合する形で成立した教主国は、さらに勢力を拡大せんとファレナにも武装宣教団(という名称だが、実質は侵攻軍にほかならない)を送り込んで来た。
これに対し、竜馬の民は女王国軍と共闘し獅子奮迅の大活躍を見せたのである。
詳しい理由は解明されていないが、竜馬はフェイタス河の岸にある洞窟でしか卵を産まない。無理に他の土地で産ませても、その卵がかえった例はないという。
また、ナガール教団の教義は竜馬を邪悪な生物としており、生存を認めていなかった。
つまり、ナガールの侵略を許すことは竜馬の絶滅につながりかねなかったのだ。
それだけに、竜馬の民は必死で戦った。
当時の女王騎士長も、「竜馬の民もファレナの民である」との信念から女王国軍主力を率いて奮戦。竜馬の巣を守り抜いた。
この戦いでは、ナガールの侵略を撃退したことよりも、女王国軍と竜馬の民の間に強い連帯感が生まれたことの方が大きな成果だったと言えるかもしれない。
戦後、女王は竜馬の民の功績を認め、南西部一帯を彼等の所領とした。一方、竜馬の民の側も女王国軍に救われた恩義に応えてファレナ女王国への忠誠を誓った。そして、女王国に難あれば竜馬と共に起ち剣を振るう軍事集団として組織化された。
フェイタス竜馬騎兵団の誕生である。
しかし、彼等は直ちに女王国の守護者と認められたわけではない。
権力闘争を繰り返す元老たちは竜馬騎兵団を己の陣営に取り込もうと腐心した。竜馬を友とする心優しき人々が宮廷人特有の陰湿な謀略に抵抗できるはずもなく、踊らされて元老の私兵のように使われることも何度かあったのである。
この状況が続くことは自分たちにとっても女王国にとっても不幸であると考えた竜馬騎兵団は、己に厳格な規律を課した。
自分たちが守るべきはファレナの河と大地であること。ゆえに、ファレナ国内の紛争には決して関与しないこと。
元老たちの行状を不快に感じていた太陽宮もこれを歓迎し、公式に承認した。
以後、竜馬騎兵団は国外からの侵略を阻止することのみに専念し、多くの民の尊敬と信頼を勝ち得るにいたったのである。
新都暦164年の大地震でファレナとナガールを結ぶ陸路が再建不能なまでに破壊され、ナガールの脅威度はかなり低下したが、東のアーメスが台頭して来たこともあり、竜馬騎兵団の存在意義は増している。
 
 
 

古い本13 「竜馬騎兵団の掟」

 
竜馬騎兵団の強さの源も、ファレナの民から敬愛を受けている理由も、彼等の厳格な掟にあることは疑いない。
しかし、その掟を守ろうとする姿勢は時に頑迷にすら見えることがある。
最も端的な例は女性の登用禁止であろう。
確かに、竜馬騎兵団の前身である竜馬の民の集落でも、女性は竜馬に乗らなかったと言われている。しかしそれは慣習であって、掟のような明確なものではなかった。
竜馬騎兵団の設立時に性別規定が設けられたのは、当時女王騎士も男性に限られていたので同様にしたというだけのことなのだ。
その後、女王騎士を男性に限る理由はないとされ、女性も任命されるようになったが、掟を守ることに固執する竜馬騎兵団はこれに追随せず、現在にいたるも女性を排除したままである。
ただ掟であるからとの理由で厳守するのではなく、掟が存在する意味を考え、改めるべきは改めてほしいものだ。
 
 
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