場面は、砂浜に流されてきたシャンテのその後へ。
女の子「あはは、つめたぁ〜い!! おとぉさぁ〜ん、早く、早く〜!!」
男「エレナ、足元に気を付けろよ」
男の子「分かってるわ」
女の子は、流れ着いたシャンテの体でつまずき、転んだ。
女の子「きゃっ! いったぁ〜い。 !? ひ、ひと…? おとぉーさぁーん!!」
男「どうした? エレナ」
女の子「人、人が倒れてるの!!」
男「む、何処からか流れ着いたらしいな…。エレナ、ちょっとどいてなさい」
女の子「うん」
男「ふむ、まだ息はあるようだ。エレナ、すまんな。散歩は、また今度だ」
女の子「うん、エレナは構わないよ」
男「取り敢えず、宿に運ぶか…」
女の子「助かるの?」
男「ああ、発見が早かったからな」
女の子「良かった…」
散歩のために偶然通りかかった親子によってすぐに宿屋へと運ばれ、シャンテは無事ベッドで目覚める。
シャンテ「う、うーん…」
エレナ「あ、目が覚めたの? もう、起きられるの?」
シャンテ「…あの、貴女は?此処は何処?」
エレナ「わたしエレナ。ここはクレニア島でわたしたちが借りている宿の部屋よ。おねえちゃん、海岸に流れついてたんだよ」
シャンテ「えっ、海岸に? …! そう言えば、私はロマリアの戦艦から落ちたんだ…」
エレナ「倒れて気を失ってたから、お父さんが運んで来たの」
シャンテ「そうだったの。助けてくれてどうもありがとう。わたしはシャンテ、よろしくね」
エレナ「うん」
シャンテが起き上がり、部屋から出ようとするとエレナはシャンテの居場所が判らなくなって戸惑う。
エレナ「ちょっと待って。きゃっ!」
シャンテ「あ、大丈夫…?」
エレナ「あれ、おねえちゃん、どこ?」
シャンテ「? …! そう言えば、その杖…貴女、目が見えないんじゃ?」
エレナ「うん、でも音で判るから平気だよ」
シャンテ「そうなの…。エレナちゃんって言ったわね。お父さんは何処にいるの?」
エレナ「今はちょっとお出かけしてる。宿のおじちゃんが知ってるよ」
シャンテ「そう、分かったわ。じゃ、お父さんに会って、お礼を言ってくるわね」
エレナ「でも…お医者さんは、まだ寝てなきゃって」
シャンテ「心配してくれるのね、ありがとう。もう、何ともないから」
エレナ「そうなの、治ってよかったね」
シャンテは部屋を出る。シャンテは、宿屋の主人にエレナの父のことを尋ねる。
宿の主人「あんた、グルガが海岸から運んで来た人だね」
シャンテ「シャンテと言います、お世話になりました」
宿の主人「ま、困った時はお互い様さ、当たり前の事したまでだよ。随分グッタリしてたみたいだけど、もう身体の方治ったのかい?」
シャンテ「ええ、お陰様でね。助けてくれたって言う、エレナちゃんのお父さんは、グルガと言うのね?」
宿の主人「ああ、俺の宿に二人で泊まってるんだよ」
シャンテ「ところで、グルガにお礼くらい言っておきたいのよ。出掛けてるらしいけど、何処に行ってるの?」
宿の主人「きっと、『鍛練の岩場』だな。明日に備えて、訓練の仕上げってとこだろうな」
シャンテ「訓練?」
宿の主人「ああ、なにしろあいつは今この島で開かれている武闘大会の優勝候補の一人だからな」
さて、いよいよちょこに会えるところまで物語は進んで来た。Arc The Lad1でちょこを仲間にしたデータでコンバートしているなら、クレニア空港の右下の崖に『時の森』があり、中に入る事が出来る。もし1をプレイしていない、またはちょこを仲間にしていなければ、此処では『時の森』へ行けない。その場合、暫くストーリーを進め、シルバーノアで自由に世界各地に行ける様になってからアララトスの遺跡ダンジョン地下50階まで行かなければならない。『時の森』を抜けるとたどり着ける場所が2つある。それは『墓地』と『トココの村』だ。其処へ到達するためのルートは何パターンもあるが、ここではその中の1つだけを取り上げる。
『墓地』へは <右、右、上、上、左、上、上>と移動する。
『トココの村』へは <上、下、右、右、左、左、上、上>と移動する。
墓地は夕方、トココ村は深夜にたどり着ける。
シャンテ「ここは?」
ちょこ「迷わないで来るなんてすごいの〜!ちょこに会いに来てくれたのね。じゃあ、ちょこ、おうちで待ってるから遊びに来てね」
そう言ってちょこはさっさと家に行ってしまう。
ちょこの家は村の左上隅。色々な人に会いながらちょこの家に入ると、早速出迎えてくれる。
ちょこ「やっと着いたのね。ちょこ待ちくたびれちゃったの。森の木がうわさしてたから楽しみにしてたの〜。何処から来たの?道に迷ったの?ねぇねぇ、その耳から下げてるのモウモウはな輪?」
シャンテ「イヤリングって言ってね。おしゃれな女の人が付けるものよ」
ちょこ「ふぅ〜ん。そうなんだぁ。じゃあねえ、ちょこと遊んでくれたらちょこが村を案内したげるの〜…」
父親「これこれ、旅の方は疲れているんだ。困らせるんじゃないよ。私はこの娘の父で、ラルゴといいます。よかったら食事でもしていきませんか?それに……、旅の方、あの森を抜けるなら今日はもうやめたほうがいい。あそこはいろんなうわさがありましてな。この世に未練を残した死者が人を迷わせるとか、あの森は魔界へ通じているとか。まあ、ただのうわさですが、あの森で行方不明になる旅人も多い。もしよかったら泊まっていきませんか。この娘もなついているようですし。明日ちょこに案内させましょう」
『泊まりますか?』という問いには素直に『はい』と答える。
翌朝、ちょこに村を一通り案内してもらった後時の森に入る。ちょこの後をずっとついていけばいい。間違ってちょこについて行っている時に別の方向にマップを切り替えてしまうともう取り返しのつかないことに。
墓地に行ってもラルゴさんに他人扱いを受ける状態に戻る。
ちょこ「ちょこ いつもこの森で遊んでるの〜。森の中にはいっぱい友達がいるの。お花さんとか小鳥さんとか、おおきな木には妖精さんがすんでるのよ。ちょこみんなとお話しできるんだから。ちょっと寄り道なの。あいさつしてくの〜」
ちょこはそう行って墓地に立ち寄る。
ちょこ「ちょっと待ってなの」
ちょこに連れられ、墓地の奥の大きな墓石の前へ。
ちょこ「こんにちわなの〜。今日もちょこ元気なの〜」
シャンテ「お母さんのお墓?」
ちょこ「ちがうの〜。眠ってるの」
シャンテ「そうね……」
どういうことなのかシャンテには皆目見当もつかないが、ここではこれ以上聞かないでいる。
ちょこ「さあ、いくの〜」
再び時の森へ。
ちょこ「ちょこね〜、はやくおとなになりたいなぁ〜。ちょこね、もうず〜と前から子供のままなんだよ。だからね、森の木に聞いたの。どうすればはやくおとなになれるのって。そしたらね〜。人の子はね。冒険をしないと一人前になれないんだって。だからちょこ冒険するって決めたの。いっぱい冒険してはやくおとなになるの。もう決めちゃったんだから置いていこうたってだめなの!さあ、しゅっぱつ〜しゅっぱつ〜。ちょこが一番なの〜」
こうしてちょこは仲間になる。
この時のちょこのステータスは次の通り。
◯アークザラッド1で仲間にし、ちょこのレベルを1のままコンバートした状態◯
投げ・受け・反撃・ジャンプレベル:0
LV:1 攻撃力:32 防御力:27 魔力:24 敏捷度:12 キック熟練度:6 HP:244 MP:91
◯コンバートをしないで、アークザラッド2のみで仲間にした状態◯
投げ・受け・反撃・ジャンプレベル:2
LV:50 攻撃力:15 防御力:12 魔力:35 敏捷度:13 キック熟練度:6 HP:113 MP:154
この様に、コンバートをした方が圧倒的に強く、また、アークザラッド1で鍛えるよりもアークザラッド2で鍛えた方が更に上。よって、ちょこはレベル1でコンバートして2で育てるのがベスト。
鍛練の岩場に入ると、グルガが何者かに取り囲まれていた。
シャンテ「!?」
グルガ「貴様ら、野生のモンスターじゃないな!」
男「貴様が人間のくせにえらく強いという噂を聞いて、それを試しに来たのだ」
男2「ガッカリさせないでくれよ。フフフフ」
それを見たシャンテが異常事態に気付く。
シャンテ「様子がおかしい!助けなきゃ」
ちょこ「ちょこもたすける!」
モンスターはニンジャ4体。取り立てて変わったところのない普通の相手。
この鍛練の岩場のマップの右上に宝箱があり、これはバトル中でしか入手出来ないので、ニンジャを倒してしまわないようにして時間を稼ぎ、シャンテかちょこに取りに急いでもらう。ただし、ちょこはジャンプも反撃もレベルが0なので、この機会にニンジャから攻撃を受けてレベルアップさせよう。ただ攻撃を受けるだけでレベルは7まで上がり、其処から少しずつ経験値を稼いでいく。1体〜2体倒せばレベルは12となり、投げ・受け・反撃・ジャンプ全て1になる。この宝箱の中身はタンザナイトで合成用アイテムともなる。それ以外の2つはイントラブルと万能薬。この時点でシャンテ・グルガ・ちょこの装備を確認し、必要なものは全て外しておく。この後のイベントはちょことグルガの基本能力だけでこなせるので、装備は無しでも一向に構わない。
シャンテ「貴方がグルガね。流石強いわ」
ちょこ「つよいのー」
グルガ「もう大丈夫な様だな。で、何の用だ?」
シャンテ「助けてもらったお礼をね、それにお願いもあって。私、ロマリアまで行かなきゃならないの。でも、此処からどう行けば良いか判らないのよ」
グルガ「武闘大会の間はこの島から出る船はない」
シャンテ「何時大会は終わるの」
グルガ「明後日だ。その後ならロマリアには簡単に行ける」
シャンテ「そう、ありがとう。ところで貴方優勝候補だそうね」
グルガ「勝たなきゃならんのだ、エレナの為にも」
シャンテ「貴方、エレナちゃんとはどういう関係なの?」
グルガ「………」
シャンテ「ごめんなさい。誰にでも言いたくない事ってあるわよね」
グルガ「いいんだ。私は、あの子の本当の父親ではないんだ。あの子が目が見えないのを良い事に、父親だと偽っている。それどころかあの子が親を亡くしたのも、目が見えなくなったのも私のせいなのだ」
シャンテ「………」
グルガ「長話をしてしまったな。先に宿に帰ってるぞ」
シャンテはクレニアの町の宿屋に戻る。そして宿屋の主人に話し掛けると、グルガのことを教えてくれる。
宿の主人「グルガと会って話してみたかい?」
シャンテ「まあね」
宿の主人「それなら、エレナちゃんの事も聞けたろ?」
シャンテ「ええ…、ほんのさわり位だけどね」
宿の主人「グルガの祖国ブラキアは、以前ニーデルに支配されてたんだ。でも、5年前にやっと独立出来たんだ、戦争に勝ってな。あの子は、その時の戦いに巻き込まれたらしくてね…。独立戦争で先頭に立って闘ったグルガは、自分で全てを背負い込んじまってる。あんた、いい人みたいだし、あいつの力になってやってくれないか」
シャンテ「分かったわ、こっちも助けてもらったんだし」
そして次の日…。
翌日、クレニアの武闘大会も最終トーナメントの初日を迎え、グルガが出場することとなる。シャンテは闘技場へ応援をしに行く。
シャンテ「う、うーん…。あーあ、よく寝た…」
宿の主人「今日は最終トーナメントの初日だ、グルガも出場するぞ。闘技場へ奴を応援に行ってやってよ」
シャンテ「必要ないかもしれないけど、応援させてもらうわ」
グルガ「ああ、ありがとう。相手が誰であろうとも、私は負ける訳にはいかないんだ」
シャンテ「幾らなんでも、そんなに思い詰める事ないんじゃ…?」
グルガ「すまないが、話は後にしよう。もうすぐ試合開始の筈だ」
シャンテ「じゃ、がんばって」
アナウンス「次の試合の出場者は、リングへご入場下さい」
グルガは、試合会場へと向かい、シャンテはそれを見送った。
………クレニア闘技場リング………。
キャッチー・マママン「…という訳で、最終トーナメント1回戦が全て無事終了した訳ですが、1回戦の後の休息もそろそろ終わりまして、選手達もリングサイドに戻って参りました。いずれの選手も、1回戦で受けた傷はあまり大した事が無い様ですが、皆さんごひいきの選手は、まだ勝ち残っておりますでしょうか? それではいよいよ、この名物アナウンサー、キャッチー・マママンの実況を交えて、最終トーナメント初日を飾る、準決勝戦を進行していきたいと思います!! では、準決勝1回戦を戦う、戦士達の入場です!!」
キャッチー・マママン「リング正面で紹介させて頂きましょう!1回戦では、アリバーシャ出身のベテラン、バグズ選手を倒しました、ブラキアより出場のグルガ選手!! そして…。 1回戦では、素晴らしい剣の技を見せつけてラペシア選手を倒しました、ニーデルより出場のジェスター選手!! 果たして決勝に進むのは、グルガ選手か?それともジェスター選手なのでしょうか?準決勝1回戦、いよいよスタートです!!
準決勝が始まりました所で、この先からはキャッチー・マママンの実況をお送りします。 2人とも此処で先ず、間合いを探っています。ここでジェスター、一気に間合いを詰める!ジェスター、これは凄まじい剣捌きだ!グルガ、踏み止まって反撃を仕掛けます!ジェスター、押されながらも攻撃を続ける!しかしグルガ、止まらない! 止まらない! おーっと! ジェスター、魔法を使った!!今大会で、始めて魔法を使って見せました!これにはグルガも、堪らず後ろへ下がる!さあ、ジェスター此処で畳み掛けるのか! 何と! グルガ、これを躱しました!! ラッシュ! ラッシュ! ラーーッシュ!! ジェスター喰らう! 喰らいまくるーっ!! ジェスター、ダウンです!! 今この瞬間に、次の決勝へ進む選手の座を、ブラキアの、グルガ選手が勝ち取りました! 凄い勝負! 正に死闘! 故に感動! 準決勝1回戦は息詰まる戦いとなりました! さあ、1回戦の勝者と入れ違いに、2回戦の選手達が入場して参ります!」
グルガは勝ち抜き、控え室へと戻って来た。
シャンテ「優勝候補と言われるだけあって、流石に強いわね」
グルガ「私は、どうしてもこの大会で優勝しなければならないんだ」
シャンテ「でも、どうしてそうまでして勝ちたがっているの?」
グルガ「私は罪滅ぼしの為にエレナを育てている。そして、この大会の賞金で、あの子の目を治せるという医者に診せてやる積もりだ」
シャンテ「でも、元の様に目が見える様になったら、貴方が本当の父親ではない事も…」
グルガ「ああ…、そうなるだろうな。それでも、そろそろ現実を見詰めなければならない時なのだ。娘も私も」
シャンテ「本当に、それでいいの?」
グルガ「いずれにせよ、そうしなければならないんだ…」
宿屋の主人「いよいよ明日は決勝戦か。何だか勝ち進めば進む程、奴の表情が寂しげになってきてる様に見えるんだがな…。」
そして次の日…。
シャンテ「う、うーん…。あーあ、よく寝た…」
決勝戦当日、控え室ではグルガが集中力を高めていた。
グルガ「この闘いで全て終わる」
シャンテ「そうね」
グルガ「気持ちを集中して、高めておきたいんだ。悪いが、もう話し掛けないでくれ」
シャンテ「………」
アナウンス『統一武闘大会決勝戦、戦士の入場です』
………クレニア闘技場リング………。
キャッチー・マママン「あー、テスッ、テスッ。 ん、ん、あ、あー。 会場にお集まりの皆さん!! お・ま・た・せ・致しました!! 全世界の人々が、『死ぬ前に一度でいいから見てみたい』と、夢にまで見るこの大会、。毎回実況をしている私でさえも、最終日ともなると、これがテンション上がりっ放し! あ、御挨拶が遅れました…私、武闘大会リングアナウンサー、リフレイン実況の王者として売り出し中の、キャッチー・マママンでございます! 世界各地での大会の優勝者が出場する、この武闘大会は、言ってみればそう、ま・さ・に、『世界一強い奴』を決める大会なのでありますよ、これが。そして、その武闘大会も、後残す試合はあと、そう、僅か、1つなのです!! そうです! 只今より、武闘大会最終戦! 決勝戦が行われるのです!! 流星の如く光っては消え行く名勝負の中、一際熱く語られるであろう大会決勝戦、そのステージを、力と技という二つの風で感動の嵐という色に染め上げられるのは、そう、たった一握りの、選ばれし戦士達のみなのです。『勝負は時の運』、だがしかし、その流れを僅かでも望み通りに変えられるならば、いかなる苦難、いかなる修行をも乗り越える強い意志を持った男達です。今その戦士達は、自らの身体と、そして心を研ぎ澄まし、その時を静かに待っております。何故ならば、この栄光のステージには、彼ら達でさえ心揺るがしてしまう様な、試合前の不安、敗北への恐怖、そして自らを超えているやも知れぬ相手があるのです。彼らはその心を静める為、今はただ静かにリングサイドで、佇んでいます。さて、そろそろ、その心の迷いも消え去ったでしょうか…。それでは、決勝戦を戦う為の戦士として、戦いの神に選ばれた選手達の入場です!!
リング正面で紹介させて頂きましょう!
準決勝では数々の魔法をかいくぐり、見事ニーデルのジェスター選手を倒しました、ブラキアの英雄、グルガ!! あのブラキアが独立した、という大事件は、皆さんの記憶にも新しい事でしょう。グルガ選手は、その独立運動の中心人物ではなかったか、というウワサが流れております。その為に、『ブラキアの英雄』、といった通り名が、いつの間にか付いております。勿論その力、その技、全て英雄の名に相応しい戦士でもあるからでしょうが。
そして、その英雄と相対するのは、この、もう一人の戦士です! 準決勝では、クレイム選手の攻撃を全く掠らせもせずに倒してのけました、影の英雄と言うべきか、マスター・ハンター『白き幻』こと、ガルバーン!! ハンターである彼は、今迄に何度も我々の生活を脅かす犯罪者を捕らえております。ブラキアの英雄が、グルガ選手だとすれば、我々の英雄は、ガルバーン選手でしょうか。英雄のライバルには、英雄こそ相応しい…。正にそんな言葉がぴったりの決勝戦です! それではそろそろ、このお喋りなリングアナウンサーが消える時間となりました。そう、この二人がステージに立った時から、此処に言葉は、要らないのかも知れません…。それでは、決勝戦、スタートです!!
決勝戦が始まりました所で、この先からは、キャッチー・マママンの実況をお送りします。さあ、どちらが先に仕掛けるのでしょうか? グルガ、様子を見つつ攻撃している感じです。うーん、ガルバーンも、同じ考えの様です。おーっと! まずはグルガから仕掛けた!! しかし、さほどのダメージは無い様です! 此処で、ガルバーンの魔法が決まったーっ! 二人とも、一旦離れて、様子を見ます。ガルバーン、ブレスでカウンターを決める! が、グルガは更に押す! 押す! 押す! しかし、グルガの必死の攻撃は当たらない! グルガ、此処で流れを変える積もりなのか?しかし其処に、ガルバーン攻め立てていく!グルガ、動かず! いや、動けないのか!?ガルバーン攻める! 攻める! 攻める!! どうした! グルガ全く動きません!! おーっ! グルガ、気合いを爆発させた!! こ、これは凄まじいラッシュが決まった! 止まらない! 止まらない! 止まらないーーっ!! 駄目だ、ガルバーン立てない! ダウン!! ダウン! ガルバーン、完全にダウンです! グルガ選手の、素晴らしい逆転劇でした!!
もう、ナミダでステージが見えません!! これこそ決勝戦、これこそ名勝負です!!
おめでとうございます!!優勝したグルガ選手には、優勝賞金として、大会機関より、10万ゴッズが送られます!!未だリングの中、外を問わず、この熱気は冷めようとはしません。武闘大会の優勝、おめでとうグルガ選手!! 素晴らしい試合、ありがとうグルガ選手!!」
シャンテ「やったわね。おめでとう」
グルガ「ああ、これで、ようやく必要な金が手に入った。早速エレナを医者に診せてやろう」
シャンテ「ねえグルガ…。今更、何なんだけど、貴方、本当にそれで良いの?」
グルガ「血の繋がりが無い私達では、所詮本当の家族にはなれないんだ」
シャンテ「そんなことは…」
グルガ「まして、私は自分の罪の意識を誤魔化す為にエレナを利用してしまっているだけではないか」
シャンテ「グルガ…」
2人は宿屋へ戻った。と、其処はかなり荒らされており、宿屋の主人も倒れている。
シャンテ「! えっ!?」
グルガ「何があったんだ?」
宿の主人「う、うーん…」
シャンテ「!」
グルガ「おい、大丈夫か、しっかりしろ」
宿の主人「ああ、俺は何とか大丈夫みたいだな」
グルガ「一体、どうしたというんだ?」
宿の主人「黒ずくめの男が来て、いきなりエレナちゃんを…」
グルガ「!?」
宿の主人「止めようとはしたんだが、情けない事にこの様で」
グルガ「何だと!」
宿の主人「グルガ、すまない…」
グルガ「あんたのせいじゃない…。 エレナ!」
シャンテ「あっ、グルガ、待って…、今迂闊に動いたって…」
部屋の中も無惨に荒らされ、エレナの姿も其処にはなかった。
グルガ「エレナ、何処だ? エレナ、エレナーーッ!! …どうしてエレナが!一体何故なんだ?」
シャンテ「グルガ…」
エレナを捜し回り、気が動転しているグルガのすぐ傍のベッドにナイフで紙切れが刺してあり、シャンテはそれに気付いてグルガに見せた。
シャンテ「? これは! グルガ、これを!」
グルガ「どうしたんだ?『可愛い娘の命が惜しくば<無人の館>まで来られたし』? 何者なんだ?エレナを攫うとは卑劣な!」
シャンテ「グルガ、私も力を貸すわ。早くエレナちゃんと助けないと」
グルガ「すまない、シャンテ」
シャンテとグルガは、すぐに島の東側にある『無人の館』へ向かった。
………無人の館………。
シャンテ「グルガ、ちょっと待って。 扉の向こうには誰も居ないみたいだけど…」
グルガ「構わん、シャンテ」
シャンテ「グルガ…」
グルガ「どっちみちエレナを人質に取られていては、我々に選択権はない。一体誰が、何を考えているのかは知らんが俺には行くしかない」
シャンテ「それもそうね…」
グルガ「シャンテ、これはお前には関係ない事だ。どんな罠が待っているか知れん。此処で引き返してくれても構わんが」
シャンテ「嫌よ!」
グルガ「そうか…ならばもう何も言うまい」
シャンテ「もう誰かが…大切な家族を失って悲しい思いをするのを見たくないだけなの」
グルガ「ありがとう…シャンテ」
二人は、無人の館の中へ踏み込んだ。
ウィザード「貴様がグルガか? くくっ、先ずはチャンピオンの実力、見せてもらおうか」
グルガ「エレナは何処だ!?」
ウィザード「さあな、俺様に勝てれば会えるかも知れんぜ」
パーティ平均レベル:38
中に入ると、早速モンスターが襲い掛かって来た。ウィザード1体にドラゴンフライ2体という編成。ちょことグルガで簡単に倒せるので、手っ取り早く決着をつけてしまおう。
広間正面の階段を上がると左右にドアがあるが、左の部屋には何もない。エレナ達のいる右の部屋へ入ると、見覚えのある黒服が話し掛けてくる。
黒服「見事な腕前だな。戦士の血に飢えた本能は隠し切れない様だな」
グルガ「貴様ら何者だ?何が目的でエレナを攫った?」
黒服「目的はお前よ。その、並外れた戦闘能力を我が研究所で利用してやろうという訳だ」
シャンテ「キメラ研究所!」
グルガ「知っているのか?」
シャンテ「私はこいつらに弟を殺されたの。それでこいつらのボスを追ってロマリアに向かうところなの」
黒服「何だと! まあいい、それなら話は早い。此処でまとめて片を付けてやる。 一応言っておくがな………。抵抗すれば娘の命はないぞ」
グルガ「なっ…!!」
シャンテ「残念だったわね!!エレナちゃんはグルガの娘じゃあないわ!」
黒服「!!」
シャンテ「ちょっと見れば分かりそうなものだけど…。あんた達、とんだ能無しみたいね」
黒服「ふん、まともにやり合えば勝てる気でいる訳か…。いいだろう、面白い、相手してやろうじゃないか。逃がさんぜ、チャンピオン」
シャンテ「(グルガ…ごめんなさい…)」
グルガ「(構わん、こういった輩相手の交渉では正しい返答だ。…それに…嘘は言っていない…)」
パーティ平均レベル:38
モンスターはウィザード1体にナイトマスターが3体。
ナイトマスターの高い攻撃力を発揮される前にちょことグルガで手早く1体ずつ倒していくようにしよう。ナイトマスターのチャージは脅威なので、こまめに回復する事を忘れずに。更にウィザードはキュアを使うので、いちいちナイトマスターの体力を回復されていたのではきりがない。
シャンテがサイレントを使い、ウィザードのキュア、ナイトマスターのチャージを封じ込めてしまえば楽になる。また、ディバイドを使えば30前後吸収出来る。
バトル終了後、エレナは奥の部屋から無事に出て来た。
グルガ「エレナ!いるのか?エレナー!!」
エレナ「お……とう……さん?」
グルガ「エレナ! 大丈夫か?恐かったろう」
エレナ「ううん、きっとお父さんが来て悪い人達をやっつけてくれるって、思ってたから」
シャンテ「そうよね、お父さんは強いもんね」
エレナ「うん!だってチャンピオンだもん。お姉ちゃんも来てくれたんだ」
グルガ「さあ、帰ろう」
シャンテ「さあ、もう安心だから、ゆっくりお休みなさい」
エレナ「うん。 あれ?お父さん、何処行くの…」
グルガ「なあに、何処へも行きはしないさ。明日はエレナの眼を元通り見える様に治してくれるお医者さんに行くんだよ。だから、今日はもう休みなさい」
エレナ「うん、そうだね、わかった。おやすみなさい、おとうさん」
グルガ「ああ、おやすみ、エレナ…」
シャンテ「エレナちゃん、お休みなさい」
ここでちょっとした小技が。
宿屋から出ずに、隣の部屋の浴室に行くとシャンテが入浴する。ただそれだけですが、あまりの出来事に、頭が真っ白になれます(笑)
シャンテ「ひと段落したから、お風呂に入っとこうっと。なかなか、いいお湯加減ね。ああ、さっぱりした」
宿の主人「グルガなら、もう外に行ったよ。ま、エレナちゃんの事なら、俺に任せといてくれ。ただ、俺から言わせれば、これで本当に良いとは、ちょっと思えないんだけどな。グルガにとっても、エレナちゃんにとってもさ」
シャンテ「そうね、でもグルガの決めた事だから」
宿の主人「ああ、随分悩み抜いた結果みたいだしな」
シャンテ「それにしても、今迄本当にお世話になりました」
宿の主人「いいの、いいの、お客へのサービスなんて当たり前だよ。それに、宿の修理まで手伝ってくれたじゃないの」
シャンテ「私のお陰で見違える程綺麗な宿になったでしょ」
宿の主人「あはは、それはどうもありがとうよ。また、寄ってくれよな」
シャンテ「こっちに来る事でもあれば、寄らせてもらうわ」
宿の主人「ああ、何時でも大歓迎だよ」
シャンテ「それじゃ、行くわね」
グルガ「娘は…エレナは?」
シャンテ「よく寝てるわ…。やっぱり疲れてたのね」
グルガ「そうか…」
シャンテ「グルガ…あんたもう…」
グルガ「賞金の残りは、あの子の目が見える様になってから使う様に頼んできた…。暫くは、生活に困らない金だ。あの子は、もう…一人で生きていける。これで…これでいいんだ」
シャンテ「あんたは、これからどうするの?」
グルガ「新しい目的は出来た」
シャンテ「目的?」
グルガ「お前と一緒さ…。キメラ研究所を、叩き潰す!何の罪も無い子供を実験材料に使う奴等を、放ってはおけない」
シャンテ「グルガ…」
グルガ「ロマリアへ行こう!寄り道をさせてしまったが、その分は役に立つ筈だ」
シャンテ「分かったわ…エレナちゃんに別れは言わないでいいのね?」
グルガ「無論だ」
シャンテ「じゃあ、行きましょう」
グルガ「……」
二人はクレニア島を後に、ロマリアへ向かった。それぞれの思いを胸に秘めながら…。